「“文学少女”と繋がれた愚者 (ファミ通文庫)」

人は誰でも、”何か”に繋がれている。
それは過去において、現在において、未来において。
繋がれていない人間なんていないし、もし繋がれていない人間が居たとしたら、その人はすでにこの世にはいない。


誠実でありたいと思うことは決していけないことではない。しかし、自分が誠実だと思いとった行動が、時に人を傷つけることがある。それは人が人で在る限りは避けられないこと。それを避けるために人と距離を取り、目をつむり、耳をふさいでも、それはきっと何の解決にもならない。


傷つき、生きる力を失っているときには、ただ泣けば良い。
そして、その後に再び頑張れば良い。


今が不幸だからと言って、将来も不幸だという証拠がどこにある。
人が不完全な愚者である限り、人の予想なんて当てにはならない。
だったらあれこれ考えずに、開き直って愚者を演じれば良い。



 物語終盤の演劇シーンは圧巻でした。遠子先輩の舞台の上でアドリブ。すべてはあそこに繋げるためのもの。舞台のシーンが目に浮かぶようで一気に読んでしまった。舞台が終わった後の、オーケストラ部のオチも綺麗に決まっていてGood。まったく、遠子先輩の可愛さは異常。
 「”文学少女”と飢え渇く幽霊」の感想では、話しの中に”救い”があると書きましたが、今回の「“文学少女”と繋がれた愚者」には、”救い”ではなく、”希望”がありました。それは、主人公の一人である井上心葉の心情に変化があったから。

 後書きを読むと、今回が中間地点になるということなので、これから主人公の一人である井上心葉を中心に物語は展開していくのかな。そこに、物語の中の、もう一人(もう二人?)”繋がれた愚者”が存在するけど、それがどう絡んでくるのか。非常に気になる。

“文学少女”と繋がれた愚者 (ファミ通文庫)

“文学少女”と繋がれた愚者 (ファミ通文庫)